同人活動する上で知っておきたい「頒布」に込められた意味を紹介する。同人誌の真髄とも言える。
これでひとまず「技術同人誌」とは何かについてのイメージは掴めてきたように思います。そうしたら次はそんな技術同人誌を実際に書いていくイメージを広げていきたいところですけれど、その前に同人誌の世界でよく使われる「頒布(はんぷ)」という言葉について紹介しておきたいと思います。
この「頒布」という言葉、同人誌界の価値観を象徴しているように感じます。この意味を知っておくことで同人界により親しみが湧いてくかもしれません。
同人の世界は元々が二次創作の分野だったので、営利目的ではなくファン活動というテイで楽しむ世界になっていました。そうとは言っても、同人誌活動を行うためには印刷費などの費用がかかってくるため、それなりに費用を回収しないと持続できない側面があります。そうなると制作した書籍を販売するのが一般的になってきますが、二次創作で著作者がいる都合、大手を振って「販売」しにくいところがあり、それを「頒布」という言葉を使って「ファン活動」の色を押し出す感じになっています。
そんな「頒布」という言葉ですけれど、表立って「販売」と言いにくいという理由だけでなく無料で配布する人たちのことも視野に入れられた表現になっているようです。同人誌は趣味の世界なのもあり、制作した書籍を無料で配布する人もいらして、そんな人たちも含めて対等に書籍を配布する行いとして「頒布」という言葉が当てられています。
また、同人誌即売会などのイベントでは「販売者と客」という区別をしないで、みんな等しく「参加者」という文化が根付いています。そのため、参加者同士で書籍を交換し広める行いとしてもこの言葉がピッタリです。同人誌を書いた人同士であれば、お互いに作った同人誌を交換し合い、同人誌を書いていない人なら自分の本がない代わりにお金と交換する、そんなふうにして同人誌の世界は成り立っています。それを象徴する言葉な気がして、同人誌活動を行う上で知っておきたい言葉のように思いました。